この記事では代謝の呼吸の分野でよく出題される「呼吸商」について説明します!呼吸商の計算はやや発展的な内容ですが、大学入試ではよく見られる問題の一つです。定期テスト前はもちろん、1月の共通テスト前までにはできるようにしておきたい範囲ですね。
今回は2つの例題で考え方や計算方法を説明しているので、苦手な人は一緒にチェック、得意な人は先に自分で問題を解いてみましょう!
呼吸商とは?
呼吸商とは、生体において、炭水化物などの栄養素が分解されてエネルギーを産生するときに、一定時間に排出された二酸化炭素(CO2)と吸入した酸素(O2)の体積比(CO2/O2)のことです。RQ(respiratory quotientの略)と呼ぶこともあります。
基本的な考え方
呼吸の反応では、酸素を使ってATPを合成する過程で二酸化炭素が排出されます。この排出された二酸化炭素を吸入した酸素量で割った答えの数字が呼吸商です。割り算の答えなので、「商」とついてるわけですね。小学校くらいで足し算の答えは和、引き算の答えは差、掛け算の答えは積、割り算の答えは商と習ったのを覚えてますか?
上述した通り、呼吸商は呼吸基質(呼吸のエネルギー源となるもの、二酸化炭素を摂取する栄養素)の種類によって異なります。たとえば一番メジャーなのがグルコース(炭水化物)です。
グルコースの完全燃焼では、以下のような式になります。
グルコース(炭水化物)以外の呼吸基質
呼吸商の例題に挑戦!
この呼吸基質が好気呼吸に使われた反応式を作成する
始めに好気呼吸(酸素を利用する呼吸のこと)の反応式を考えてみましょう!この反応式は暗記する必要は全くなく、その場で作ることができます。ポイントはO2 、CO2 、H2Oの係数をそれぞれx、y、zと置くことです。
化学反応式を作る方法と同じように式を完成させる
ここでのポイントは「左右のパーツの数を揃える」ことです!
- Cに注目する…左辺はCが【16個】なので【y=16】とする。
- Hに注目する…左辺はHが【32個】なので【z=16】とする。
- Oに注目する…右辺にはOが【48個】、左辺にはOが【2個】ある。
⇒残りの【32個】がxO2にあればよいので【x=23】となる!
よって反応式は次のようになります。
呼吸商を計算する
最初に説明した通り、排出された二酸化炭素を吸入した酸素量で割った答えの数字が呼吸商です。CO2 / O2 なので…
呼吸商が0.7と出ましたね。問題としては0.7が求められれば正解です。補足事項としては、この数字は脂肪なので、C16H32O2の物質は脂肪であることもわかります。
混合物の呼吸商を求めてみよう!
タンパク質以外の物質で使用した際のO2を求める
問題文より、タンパク質1gから0.16gの窒素が排出されるということがわかります。では、窒素8gを排出するのに必要なタンパク質について考えてみましょう。窒素0.16gで1gのタンパク質に相当すると考えると、以下のような式ができます。
窒素8gを排出するのに必要なタンパク質は50gだということが求められました!
次は、「タンパク質1gからは0.95LのO2が吸収される」というところに着目してみましょう。先ほど計算してわかった、50gのタンパク質では何Lの酸素が吸収されるでしょうか?
1gで0.95L吸収されるということで、そのまま掛け算で求めます。50gのタンパク質では47.5Lの酸素が吸収されるということがわかりました。
全体で使用した酸素量は428.0Lである
タンパク質以外の呼吸基質で使用した酸素量は次のようになります。
全体で使用した酸素量ー50gのタンパク質を呼吸基質としたときに吸収される酸素量47.5Lという式ですね。その差であるタンパク質以外の呼吸基質で使用した酸素量は380.5Lです。
タンパク質以外の物質で排出されたCO2を求める
上記と同様の方法でも求められますが、今回はタンパク質の呼吸商が既にわかっているため、次のような方法でもタンパク質で排出された二酸化炭素量を求めることができます。
タンパク質で排出された二酸化炭素 = 38.0L
全体で排出されたCO2は380.4Lなので、タンパク質以外の物質で排出されたCO2は次のようになります。
呼吸商を求める
それでは、タンパク質以外での呼吸商を求めてみましょう!最初に説明した通り、排出された二酸化炭素を吸入した酸素量で割った答えの数字が呼吸商です。CO2 / O2 なので…
まとめ
呼吸商とは、生体において、炭水化物などの栄養素が分解されてエネルギーを産生するときに、一定時間に排出された二酸化炭素(CO2)と吸入した酸素(O2)の体積比(CO2/O2)のことです。
呼吸商の値から呼吸基質を推測することもできます。グルコース=1、脂肪=0.7、タンパク質=0.8という数字は必ず覚えておきましょう。
最初は難しく感じるかもしれませんが、二酸化炭素と酸素の量が求められれば計算できるので、問題文をよく読んで、今回の例題のように一個ずつ計算していきましょう!
コメント